ONEDOG:壁打翻訳手習帳

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女子大が男子学生に門戸開放する理由

入学者減少を食い止める試み

ペンシルヴァニアの小さな女子大、ウィルソン大学はかって閉校寸前だった。しかし、1979年に職員と学生からの反対が巻き起こり、3ヶ月もたたないうちに110万ドルの資金が集められ、大学は存続することができた。今年、大学はそのときと同じような入学者と授業料収入の急減に直面した。そして、大学は、存続のための唯一の選択肢に目を向けた。男子学生の受け入れである。

アメリカに存続する数十の女子大の一つ、ウィルソン大学の関係者は、人口の半分だけを対象として存続することはもはやできないと語る。大学入学者数は全体で2000年以来32%増加している一方で、女子大への入学者数は同時期に29%減少している。その結果、共学に変更する女子大が増えている。国立高等教育研究所によれば、1960年には約200の女子大があった。入学者数の不振にみまわれた大学は存続の道を探らざるをえないため、女子大の数は現在では44校前後にまで減っている。

ここ2年間でも、少なくとも他に3校の女子大が共学への転換を、実施もしくは計画している。ローリー市のウィリアム平和大学に男子学生が始めて入学許可されたのは2012年のことだった。ニュージャージー州のジョージコート大学は昨年共学化した。ピッツバーグ州のチャットハム大学は来年から男子学生を受け入れ始める。

ウィルソン大学の広報担当者ブライアン・スピアー氏によれば、ウィルソン大学では40年間というもの大学学部入学者数は慢性的に少なかった。ピーク時には732名の入学者がいたものの、1980年以降338人が最大だった。昨年は600人の志願者に入学許可が与えられたものの、実際の入学者はたった100人だった。その結果、男子学生を受け入れるというバーバラ・ミスティック学長の計画を、理事会は承認することになった。

移行計画は昨秋始まり、まず通学の男子学部学生が入学した。今秋には、男子学生がキャンパスの寮に入る。共学化は再活性化計画の一部であり、授業料の17%引き下げと学費ローンの買い戻しプログラムもおこなわれる。

「この30年間というもの、学部入学者数の不振を食い止めようと、本学は様々な手を打ってきましたが、どの試みも事態の改善には至りませんでした」」とスピアー氏は言う。

しかし、すべての人が賛意を示しているわけではない。学生と卒業生は、共学化に反対する2つのグループを結成した。そのグループの一つ、ウィルソン大学女子会は、1980年卒のグレッチェン・ヴァン・ネス弁護士に率いられており、フェイスブック上で465名がメンバーとなっている。もう一つのグループ、ワイルド・ウィルソン・ウーマンには1400人以上のメンバーがいる。

ミスティック学長への提言をおこなう委員会の委員に就任したヴァン・ネス弁護士は、入学者を増やす手段としての共学化は支持しないと語る。大学学則への修正をまず提示し、実施は承認を待たねばならないという州教育省の規約が守られていないという点で、大学の運営を彼女は非難している。大学側は昨年州に学則変更を申請したが、承認を待たずに昨秋に通学の男子学生受け入れた。そればかりか、大学は共学校としての宣伝をすぐに始め、男子体育会のコーチを雇い、男子学生寮の準備を開始した、とヴァン・ネス弁護士たちは指摘する。ヴァン・ネス弁護士はこれは不法だというが、大学側は1993年の学則変更で男子学生受け入れの許可は得られていると主張している。

ヴァン・ネス弁護士は、「ウィルソン大の女子大というアイデンティティーは突然失われてしまったのです」と言う。

6月に、ウィルソン大学女子会のメンバーへのヒアリングが州教育省で認められた。そこで、大学の共学化へ向けたこれ以上の活動を停止するよう、州の仲裁を求める訴えがおこなわれた。同省は判断を示す時期を示していない。

チャットハム大学の場合は、男子学生受け入れの決定はすんなりと受け入れられた。

「この20年間というもの、共学化の案は話題に上がっていました。その共学化案とは、学部は女子大のままで、大学院を共学化するというものです。」と、同大広報担当のビル・キャンベル氏は語った。

1992年に、大学院課程などへの男子学生の受け入れが始まった。この動きで一時的に入学者は増えたが、2008年には入学者数は再び減少した。

「今日では、女子大に関心のある女子学生は減る一方です。」とキャンベル氏は言う。「女子だけのための大学という使命を継続するために、これほど多額の資金を投じ続けることが可能なものでしょうか?」

チャットハム大学では男子学生受け入れを先だって見越していたと、キャンベル氏は言う。これからの数年は小規模の特化した大学にとっては特に厳しいものになるとスタンダードアンドプアーズは2月のレポートで予見している。同大学は、このレポートをこれから起こる問題への警鐘として受け止めた。そのレポートの中で、チャットハム大はBBBの低格付けを受けている。

男子学生の受け入れは苦闘する学校の財政的解決策にはなるかもしれないが、重要なのは、学校選択にあたって女性が選択肢の幅を持つことだ、とマリリン・ハモンド女子大学連盟会長は指摘する。

「問題なのは、女子大がなければ、再び女性の選択肢は限られたものとなるということです。」と彼女は言う。

ウィルソン大の場合、ヴァン・ネス弁護士ら反対派は、州が女子大という選択肢を守ってくれることを期待している。教職員と学生がウィルソン大学の閉鎖に抗議をおこない、最終的に判事により閉鎖が阻止されたのは1979年のことだった。そのとき、ヴァン・ネス弁護士は3年生で、学生自治会の委員長だった。

ヴァン・ネス弁護士は言う。「私たちは、かって歴史的な事を成し遂げました。常に変化し続けている高等教育ではそれはもう過去のことに過ぎませんが、女子大の存在意義はあるはずです。」

 TIMEの9月29日のウェブ記事から。最近、日本でも予備校の閉鎖が報じられていますが、少子化の影響は日本の大学も避けられないでしょう。こうした女子大の再編や共学化というのは、今後日本でも広がっていくのかもしれません。