ONEDOG:壁打翻訳手習帳

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19歳アメリカ女性の平均体型をした新登場の「フツーなバービー」、ステッカーで脂肪もつけられます

「ありのままの現実はかっこいいんだということを見せたかったんだよ」と「ラミリードール」のクリエーターは語る。

 

年末商戦を一ヶ月後に控えて、おもちゃを購入しようとしている生真面目な人は悩みを抱えている。子供にバービー人形を買ってあげようかと思うが、現実にはありえないような体型の夢でいつまでもあんな商売をさせておいてよいものだろうか。そんな体型は何の役にも立たないのだ。(実際にバービーが人間だったら、這いつくばって四つ足で歩かなければいけないだろう。あんなに足が小さく、内臓を入れる体内の空間も本当の人間の半分しかないのだから)

 

そういう訳で、ニコレイ・ラムはグラフィックデザイナーを辞めて玩具制作者となり、「ラミリードール」を作ることになった。バービーが実際の19歳の女性の平均体型をしていたら、どう見えるだろうか。もちろん、実際のデータに基づいてだ。そして、髪の毛もブラウンだったらどうだろう。(ステッカーの着せ替えセットも同時に発売されるが、これで脂肪、そばかす、ニキビを加えることもできる。これについては後でも触れる)

 

2013年7月にアート・プロジェクトとして始まった「ラミリードール」が今週の水曜日に発売される。「両親と子供たちがどこで「フツーなバービー」を買えるのかメールで尋ねてきた。でも、存在しないものだったんだよ」と26歳のラムは言う。そこで、彼は作品をクラウドファンディングにかける決心をし、目標設定額の9万5千ドルに対して50万1千ドルを集めたのだった。「正直言って、爆発的な成功になるか、吹っ飛ばされるような失敗になるか、どちらかで、その中間ということにはならないと思っていたよ」

 

ラムは、自分の考えを良く理解してもらうために、「ラミリードール」をバービーに変形してみせるビデオも作成した。「本当にそれがかっこいいものだと見せたかったんだ。ほとんどのおもちゃは子供をファンタジーの世界に引き込むけど、現実の世界だってかっこいいんだということをなぜ見せてあげないんだろう?現実の世界は完全なものではないけれど、それこそが本当の僕らの世界なんだよ。そして、それは素晴らしいものなんだから」

 

1万9千体の「ラミリードール」が出資者に発送されるが、さらにホリデーシーズン前にはさらに2万5千体の出荷の準備ができている。しかし、現実通りの体型と動きだけではまだ十分ではない。「ラミリードール」に25ドルの値段をつける前に、ラムは次の一手を打つことを決めていた。

 

1月に発売されるステッカーの着せ替えセットも申し込もう。ラムによれば、このステッカーに適した素材を見つけるのに4ヶ月かかったそうだ。これがあれば、人形にニキビ、そばかす、ほくろ、頬紅がつけられるのだ。

 

ラムは、すり傷やあざも入れることにした。「DVなんかを奨励でもしているのかとあきれる人もいるかもしれない。でも、誰でもちょっとしたけがはするものだ。完全な人生なんてないんだから、誰だって転ぶことはあるけれど、みんな立ち直るじゃないか」

 

叔母に傷跡も入れると良いとラムはアドバイスされたそうだ。「傷跡があると、それですっかり内気になってしまう子供もいるからね」

 

では、脂肪や妊娠線もあることについてはどうだろうか。

 

妊娠線のある人形をインターネットで発表するなんて、厄介事を招いているようなものだ。しかし、ラムは、これは真剣な気持ちからのものであって、このオプションを喜んでくれる人もいると主張する。「歌手で女優のデミ・ロヴァートもツイッターで触れてくれたよ」とラムは言う。「いいかい、このプロジェクトは全部冗談じゃないのかと最初からみんな言っているんだ。だから、この妊娠線だって冗談だと受け止める人もいることは間違いない。でも、僕と同じ考えの人だって大勢いてほしいと思うよ。僕の考えでは、25%から30%くらいの人たちはこのステッカーは馬鹿げていると考えるだろうけれど、他の人たちは認めてくれると思う」

 

来る1月「ラミリードール」には、他の着せ替え用の服が加わる。「これは人形好きの人が待っていたものだね」とラムは言った。妊娠線だけではなく、すべてが揃うのだ。

 

 

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 ラミリー社のWebサイトはこちら。ハリウッドやディズニーと同じで、バービー人形もアメリカの文化や価値観を伝えるソフトパワーの最たるものの一つですね。バービーの超理想体型に対して、あるがままの姿を肯定しようという考え方はなるほどと思いました。でも、子供にしてみればどうだろうと最初は思ったのですが、けがの傷でコンプレックスになってしまう子供にとっては、人形だってそういうオプションがあるというのは、確かに勇気づけられそうですね。ダイバーシティー、ジェンダーといった問題は、ここまでするのかと日本人的には驚かされることが多いですが、それがアメリカのパワーの源になっていることは間違いありません。まあ、実際のアメリカ人はやっぱりもう少し痩せた方が良いという人が多すぎますが・・・。