ONEDOG:壁打翻訳手習帳

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歩けば発電

ピッツバーグのスタートアップ企業、SolePower社は、ユーザーが歩くことで発生する運動エネルギーを回収して携帯電話を充電することができるインソールを開発している。

 

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カーネギーメロン大学の機械工学科で、アレクサンダー(Hahna Alexander)はキャンパスで学生が抱える問題を解決する技術を開発するという課題に取り組んだ。彼女はクラスメートと突飛なアイディアをあれこれと出し合った末に、足が地面を踏むときに発生するエネルギーでLEDを光らせる靴を作成することにした。

 

この発明は課題の条件を満たしていた。この靴を履けば、夜にキャンパスを歩くときでも学生は安全だ。暗い道を照らしてくれるし、近くの車の運転手もそこに人がいることが分かる。事実、彼女はA評価を手に入れた。だが、アレクサンダーと共同開発者の一人であるスタントン(Matthew Stanton)は、もっとインパクトのあるアイディアを胸に秘めていた。「エネルギー回収の仕組みを汎用のインソールに埋め込めば、どんな靴でも利用できます。そして、これで充電器をチャージすれば様々なデバイスに使えるということに、我々は気づいたのです。」

 

二人はプロトタイプを作成し、いくつかのグループにデモを見せ、初期段階でのフィードバックをもらった。そして、数ヶ月後にはSolePower社を設立した。ピッツバーグに拠点を置くスタートアップ企業として、2013年にキックスターターでのキャンペーンに成功し6万ドルの初期資金を手に入れた。そして、"EnSoles"と名付けた商品を大手アウトドア小売店に取り扱ってもらおうと順調に開発を進めている。我々はアレクサンダーにインタビューをおこなった。

 

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ーまず、課題について聞かせてください。現在、どんな課題に取り組んでいるのですか?
「携帯電話、ウェアラブル機器、カメラ、センサーといったポータブル電子機器は、日常生活においてますます役立つようになっているのは言うまでもありません。身の回りのデバイスをすべてネットワークで接続して、非常に面白い効率的な方法で人間とモノが情報のやりとりをすることが今後できるようになる可能性があります。しかし残念ながら、電池技術の進歩のスピードは、ポータブル電子機器の進歩の目覚ましいスピードとは比べものになりません。つまり、壁の電源コンセントにつないで充電せずにポータブル電子機器を長時間使おうとすれば、予備のバッテリーを持ち歩いて充電するしかないのです。本質的に、ユーザーは完全にモバイルになることはできません。それは、電源がモバイルではないからです。そこで我々は、充電するデバイスと同じくらいモバイルなエネルギー源を開発して、この問題を解決しようとしているのです」

 

ーSolePower社はどういう会社なのですか?紹介してください。
「モバイルデバイスが進歩すれば、エネルギーがますます必要になり、バッテリーの容量限界がいっそう制約になります。SolePower社は、モバイルデバイスのユーザー自身をエネルギー源にすることで、こうした制約をなくすウェアラブル技術の会社なのです。
"EnSoles"を一組装着して1時間歩けば、スマートフォンで2.5時間通話することができます。電源出力のポテンシャル、ユーザーの自然な動きとの目立たず円滑な一体化という二つの点について、"EnSoles"に匹敵するパーソナル発電デバイスは市販されていません。SolePower社の技術は外部環境にも左右されません。雨でも晴れでも、昼でも夜でも、歩けば歩くほどバッテリーは充電されるのですから」

 

ー原理を詳しく教えてもらえますか?
「ユーザーが歩いてかかとを踏むたびに、インソール内部のメカニズムが動作して、直線運動を回転運動に変換します。この回転運動で、小さな電磁発電機をできるだけ速く長い間回転させます。そこで発生した電力で、“PowerPac”と呼ぶ外付けのバッテリーを充電します。このメカニズムとインソール”EnSoles”を合わせて“ENergy inSOLE”と呼んでいます」

 

ーあなたの技術的バックグラウンドについて教えてください。
「共同設立者のマットと私は共に機械系のエンジニアです。マットはカーネギーメロン大学のバイオメカトロニクス研究室で、足に重量が加わったとき人の歩き方にどんな影響があるかということを研究していました。彼は根っからの修理屋気質で、いつも何かを作っていました。マットはもの作りが大好きなので、SolePower社を始めることを決断するまでは、政府機関で原子力潜水艦を建造していました。彼はハイキングも大好きで、出かけるときはいつも製品のテストをしています。
私自身のバックグラウンドは宇宙技術関連の機械工学です。NASAとスペースX社でインターンを行い、地球外の強風下で使うエネルギー回収ロボットを設計し、カーネギーメロン大学の惑星ロボット研究室で勉強しました。私はずっとSFが好きだったので、”EnSole”のようなクールなウェアラブル技術を開発する機会に恵まれて幸せです」

 

ーこれまでのところの成功についてどう思いますか?
「この2年間、ありがたいことに数多くの支持と注目をいただいてきました。2013年の夏にキックスターターのキャンペーンを始めたところ、600人の後援者から資金提供をいただき、そのうちの450人には完成した”EnSoles”を最初のユーザーとしてお買い上げいただきました。今年は、ポピュラーサイエンス発明賞、発明家のためのアフリカエネルギー賞、スティーブ・ケース(AOL創始者)のライズオブザレストコンペ一位といった賞を受賞しました。また、ホワイトハウスで今年から毎年開催される「メーカーフェア」に展示の招待を受けました。こうした注目をいただいたおかげで、100ヶ国以上、5300人の方から製品の予約をいただきました」

 

ー今後、会社をどのように成長させていく考えですか。次はどのようなことを考えていますか。

「モバイル機器を使い、歩ける人であれば、誰でも我々の顧客になってもらえる可能性があると考えています。しかし、まず始めにアウトドア市場への参入を目指します。アウトドア市場では、電気のないところへ出かけていくハイカー、バックパッカー、キャンプ愛好家がアメリカに3500万人います。REI、ダンハムス、カベラス、ガンダーマウンテン、イースタンマウンテンスポーツといったアウトドア用品小売店に取り扱ってもらうことを狙っています。これは我々が製品とブランドを確立するチャンスになるでしょう。一般消費者向けの家電製品や、発展途上国で電気なしに暮らしている人にも使ってもらえるような低価格版にもゆくゆくは取り組みたいと思っています。次のステップとしては、まず大量生産を始めて、1000人超の多数のユーザーとトライアル試験を行うことです」

 

ー軍事用途への利用も計画していますね。
「軍や政府のいくつかの機関とそれぞれ打ち合わせを行い、現在はその中の一つと契約を結んでいます。戦場で兵士は様々なデバイスを活用していますが、スマートフォンと同じように、ポータブル軍事デバイスもバッテリーが持つ時間が制約になっています。戦場で電池切れになれば致命的な事態になるため、兵士は20ポンド(約7.4キログラム)にもなる予備のバッテリーを持ち歩いています。米軍はこの負荷を軽減する方法を見つけ出そうと熱心に探しています。我々の技術も、米軍が有望と考える技術の一つです」

 

ーもし読者に一つ質問をして、SolePower社の今後の成長に役立つ解もクラウド集合知で求めるとしたら、どんな質問をしますか。
「バッテリーを切らさないためにどのくらい歩いても良いですか、という質問ですね」

 

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1時間歩けば2.5時間携帯電話で通話できるというのは、実現されればものすごく有望ですね。写真や開発者のバックグラウンドから見て、メカニカルな仕組みを使っているようです。圧電素子のような材料で発電するよりも、効率も高くなりそうだし、ラバストに出来そうです。詳しい原理は特許でも調べるしかなさそうですが、まだ公開になっていないでしょう。いずれにせよ、今後に期待が持てそうな話です。