ONEDOG:壁打翻訳手習帳

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学生にネット接続機器は本当に必要?

オバマ大統領は一般教書演説の中で、教育に関して、『自由でオープンなインターネットを守り、全てのクラスルームやコミュニティーでアクセスできるよう利用を拡大する』と述べたそうですが、それに対するオピニオン記事の一部です。

 

2000年代初頭にデューク大学の経済学者、ヤコブ・ヴィダーとヘレン・ラッドは、およそ100万人の恵まれない中学生について、ネットワーク接続されたパソコンを与えられた後の学習進度について追跡調査をおこなった。生徒の数学と読解の能力について5年間、毎年評価をおこない、生徒がどんなことに時間を費やしたのかを記録した。結果は良くなかった。

 

「グレード5から8(日本の小学5年生から中学2年生に相当)の間にパソコンを使えるようになった学生の間では、読解力と数学の成績低下が一貫して認められた」と彼らは述べている。また、インターネットを自由に利用できるようにすると成績低下する傾向はさらに下の学年でも認められたと加えている。

 

実際、調査を続けた間、学生の成績は落ち、低迷を続けたままであった。さらに悪いことに、少年やアフリカ系といった影響を受けやすい学生について、悪影響はいっそう深刻だった。コンピューターが届くと、生徒の読解力は急低下した。

 

理由は不明だが、推測することはできる。監督する大人がいなければ、ネットにつながったデバイスを勉強以外にも、ゲームで遊んだり、ソーシャルメディアにはまったり、娯楽コンテンツをダウンロードするために使う子供は多いだろう。手本とする大人が子供の傍にいたとしても、その大人の大半も同じことをするだろう。子供がそうしないわけがない。

 

まあ、それはそうだろうな、と納得できる話ですが、ちゃんとこういう調査結果があるんですね。子供をインターネットにアクセスしたい放題にすると、むしろ成績の格差は広がり、ひいては貧富の格差の拡大につながりかねないという結論のようです。昨今、インターネットは馬鹿と貧者のためのメディアという声も強くなってきていますが、アメリカも事情の根本は変わりないのでしょう。

 

だからといって、使うなと言っても、今時無理な話であることは間違いありません。格差という点から考えるならば、むしろ、恵まれない環境にある子供にはインターネット環境を与えず、成績を上げさせた方が将来のためになるのかもしれません。ただ、それは子供から別の人権を奪っていることになるのかもしれません。

 

インターネットやコンピューターといったテクノロジーは本当に教育の役に立つのか?ということも、落ちついて見直すべきなのでしょう。電子ブックについても、教科書を電子化することの是非などについては、さまざまな議論があるようですが、きちんとした統計に基づいて議論するべきだと思います。そして、テクノロジーをどう利用すれば教育の役に立つのか?ということも、テクノロジーや政策の観点で上から考えるのではなく、教育のツールとして教育現場の目線で考えるべきなのでしょう。以前はそこで教師のITスキルが問題になりましたが、教師の世代交代も進んでいるでしょうから、そろそろ別な見方が可能になっているのではないでしょうか。そうしないと、とにかく電子化することは良いことだとする立場と、とにかく電子化には反対するという立場の水掛け論にしかならないのではないでしょうか。

 

いずれにしても、テクノロジーは日進月歩で進歩するけれど、人間は世代から世代くらいの遅々とした速度でしか変化しないので、そこを踏まえて取り組んでいくしかない話だと思います。