ONEDOG:壁打翻訳手習帳

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米軍が今夏おこなう軍事演習ジェイド・ヘルム15はクーデターだという陰謀論

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ユタ州ではクーデターを心配していないようだという話を御存知だろうか?

 

こんな文を書くことになるとは夢想だにしなかった。しかし、これは本当の話だ。軍事演習訓練がこの夏に南西部で実施されるが、陰謀論が噴出している。ウォールマート店舗の地下では軍隊をテキサスに送り込むためのトンネルが掘り進められており、軍隊はテキサスでアメリカ合衆国憲法を破棄し、住民の銃を没収するという話をウォールマートが否定した時には、おもしろがらずにはいられなかった。

 

しかし、テキサスの話を笑っている場合ではない。

 

「この軍事演習には、米軍が今日的な戒厳令のために準備を進めているのではないかという懸念がいささかある」と、テキサスの共和党下院議員、ルイ・ゴーマートが発言したのだ。

 

彼は良く分かっている。アルカイダがメキシコのドラッグディーラーと国境付近で野営してはいないか、といった彼の心配事は山のようにある。政治的大事件のニュースを持っているなら、真っ先に彼に電話するべきだ。オフィスでは警告の電話が鳴りっぱなしだと彼が言うのもうなずける。

 

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騒動の中心となっているのは、軍事演習がおこなわれる7つの州の地図だ。軍事演習の目的に対して住民がどれだけ協力的かという想定に基づいて、その地図は色分けされている。テキサス州は赤く塗られているが、それは「敵対的」という意味だ。

 

広報的な観点から見て、色分けは適切ではないし、全演習のジェイド・ヘルム15(Jade Helm =翡翠のヘルメット)という名称も同様に不適切だろう。「更紗の子猫」作戦とでもいった名前にして、仮想敵もオレゴン州にでもしておけば、今頃こんな話はしていなかっただろう。

 

「敵と想定されている地域は、共和党が強い地域ばかりなのには、かなり驚かされた」とゴーマートは述べている。

 

もう一つの赤く塗られた州はユタ州だが、ユタ州はこのジェイド・ヘルム演習とその恐怖に対して全く無関心なようだ。共和党のゲイリー・ハーバート州知事のオフィスは、この件に関して、かかってきた電話は高々2ダース程度のものだと述べ、ハーバート州知事自身も軍の演習計画は「通常の演習訓練」であるとして意に介していない。

 

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しかし、話をユタ州に戻そう。ユタ州は非常に保守的な地域だから、銃を没収しようなどという計画には確かに動転するだろう。(今年のユタ州議会記念銃はAR-15セミオートライフル(軍用のMR16に似ている)で、側面には州のモットー(勤勉)が刻まれている。)では、なぜユタ州では、ジェイド・ヘルムのハルマゲドン予言が騒ぎになっていないのか?

 

「現時点で私が聞く限り演習を非難している人はいません」と、陰謀論についての著書もあるユタ大学歴史学教授ロバート・ゴールドバーグは言う。

 

彼はテキサス州に住んでいたときに、「ユタ州の人は角がなく、怒りっぽくもない」と気がついたという。この州は比較的落ち着きがあり、それは住民の均質性に起因するのかもしれないと、彼は理由づけている。「人々は秩序が保たれていると感じているのだと思う。自信のある保守主義ということです」

 

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テキサスはどんどん多様性のある地域になっているが、おそらくそれが理由かもしれない。にもかかわらず、保守主義者たちはワシントンという巨獣の仕打ちに怒っているからだと言うだろう。ワシントンでは、テキサスの共和党議員が委員長を務める下院委員会は28.5%にすぎない。過去9代の大統領のうち、テキサス出身の大統領はたった3分の1だ、と。この人たちはパラノイアを悪化させるために、まだまだ色々なことをするだろうと言わざるを得ない。

 

人前に立ち手紙を受け取るような人なら誰でも心得ていることだが、アメリカ人の中で完全に常軌を逸しているのは、ほんの一部である。これはいつでもそうだった。アメリカ建国の父たちも、おそらく、ジョージ3世がロバに変装して道脇の家畜小屋に住んでおり地域の軍事活動をスパイしていると信じている人たちからの手紙を受け取ったことだろう。もちろん、今が昔と違うのは、インターネットとソーシャルメディアのおかげで、いっそうこうした人たちが、目につきやすく喧しくなったことである。

 

どんな立法府にも変人でかつ異様に話したがりの議員が僅かだがいるというのも、常に変わらぬ事実である。こうした人たちは、同僚に対する影響力はないが、近頃では口コミに訴えることができる。ルイ・ゴーマートは火遊びをしているにすぎない。

 

テキサス州でも、主要な保守主義者たちは自州がクーデターの危機にあるなどとは思っていない。しかし、一方で、ミッドランド市で市民がクーデターはないということを確認しようとする段になっても、オバマ政権側に立っているかのようには見られたくないとも考えているのだ。「連邦政府が、我々の言論の自由、宗教の自由、自衛の自由を侵害しているのを目にするようなことになれば、政府に対する不信が生じることになる」と、大統領候補のテッド・クルーズ上院議員はブルームバーグ・ポリティクスに語っている。

 

腰抜けの政治家が大勢いるというのは困った話だ。その一方で、右派ラジオ局のトークショー司会者、ブロガーやツイッターユーザーが倦むことなく一週間を費やしたにもかかわらず、ウォールマートの地下トンネルを通って軍がクーデターを起こそうとしていると考える人は、実際、ごく僅かだ。

 

手に入るなら、良いニュースを信用するべきなのだ。ユタ州に感謝したい。

 

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官邸がニュース番組に圧力をかけてコメンテーターを首にしたというどこかの国のつまらない陰謀論に比べて、アメリカの陰謀論はスケールが大きくて面白いですね。久しぶりにアメリカの気違いっぷりに痺れました。

 

それにしても、この前のボルチモアの暴動や、大規模テロの可能性を考えると、こうした演習も必要ないとは言い切れないんでしょうか。