ONEDOG:壁打翻訳手習帳

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世界最古にして地球最大の生命体であるポプラの森

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ユタ州のフィッシュレイク国立森林公園では、一人の巨人が8万年にわたり静かに生きてきた。

 

「身震いする巨人」(The Trembling Giant)とも、「パンド」とも呼ばれるこの巨大なポプラの森は、「一つの生命体としての森」という比喩を文字通り形にしたものだ。この森は本当に一つの生命体なのである。この森のおよそ4万7千本の各々の木は、遺伝子的に同一であり、全ての木が一つの根を共有するシステムなのだ。ほとんどの樹木は花を咲かせて有性生殖を通じて繁殖するが、ポプラは、地中で横に広がった親木の根から新しい木が芽を出し、無性生殖をおこなうのが普通である。一つ一つの木は個体ではなく、一かたまりの単一のクローンの幹なのだ。このクローンはまさに一かたまりなのである。107エーカーにわたり広がり総重量6615トンに及ぶパンドは、かつては世界最大の生命体と考えられていたが(現在ではオレゴン州の1000エーカーに広がる菌床に世界最大の座を奪われた)、最大のかたまりであることはほぼ間違いないだろう。別の比類なき点として、楽観的な推定ではパンドの樹齢は百万年を超えるが、これは地上最古の生命体の一つたるに充分だろう。

 

不幸なことだが、この巨人の未来は暗澹としている。2010年、ユタ州立大学のエコロジスト、ポール・ロジャースがザ・デザート・ニュースに寄せた記事によれば、この「身震いする巨人」は危機に直面している。年を取ったパンドの幹は害虫と干魃に絶えず襲われ、かわるがわる枯れていくが、パンドの復元力の源である再生力のある根も攻撃を受けているのだ。鹿やヘラジカが食い荒らすために、古い木にとって代わる幼木や若木が著しく無くなっているとロジャーは報告している。新しい木が育ち、古い木を置き換えなければ、「身震いする巨人」は破局を免れることができず、急速に枯れて縮小していくことになる。ロジャーは、この生命体が「急激に滅びつつある」と打ち明けている。

 

ポプラの名の由来は、やさしいそよ風にさえも良くそよぎ、わずかな風でもバサバサと音を立てるその葉にある(英名Quaking Aspenは「よく震えるハコヤナギ」という意味)。数百エーカーに広がる何十万本の木が立てるパンドの大音響は身がすくむようであり、死にゆきつつある古代の「身震いする巨人」の生命をまざまざと感じさせる。

 

 

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世界最大の生命は、象でもクジラでもなく、菌類だったとは知りませんでした。それに次ぐ巨大生命体にして、百万年生き続けてきたポプラの森。なんとも壮大です。

 

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