ONEDOG:壁打翻訳手習帳

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「処女検査」への固執が示すインドネシア空軍の腐敗

良識と平等を旨とする組織では、こんなおぞましい手続きの採用は考えられないと人権活動家は語る

 

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インドネシアでは数十年間にわたり、空軍や警察に職を求める女性や軍人と結婚しようとする女性は、「処女検査」として知られる屈辱的な手続きを堪え忍ばなければならなかった。

 

人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)がこの慣行に注目するまでは、それは公にはされない醜い秘密だった。先週発表された報告で、ニューヨークを本拠地とするこの圧力団体は、インドネシア軍に対して、女性採用候補者と軍人の婚約者に対する処女検査をやめるように求めた。これは、インドネシアの婦警候補生たちが検査受診を求められていたことが暴露されてから6ヶ月後のことだ。

 

HRWのインドネシア調査官アンドレアス・ハルソノは、「彼らは、軍は肉体的にも精神的にも最も優れた採用候補者を求めているのだ、と言うのです」と語った。「軍人の妻に対しても同様の理屈です。彼らは、処女は非処女よりも精神的に健康だと考えているのです。報告によれば、『自分自身の名誉を守れなければ、国家の名誉を守れるわけがない』と彼らは繰り返し言っているのです」

 

司令官、モエルドコ将軍は、検査には何も問題はないという。「それは良いことだ、何故批判するのか?」と、彼は先週金曜日に報道陣に述べた。処女検査は「道徳性の指標だ。他に方法はない」とも言っている。

 

将軍の反応は、警察幹部の発言の繰り返しだ。検察庁長官モエクギヤルトは、警官の倫理基準を保つために検査は必要だと言った。「採用候補者が売春婦だと分かれば、採用できるわけがない』と彼は11月にも発言している。(しかしながら、他の警察高官たちは、検査を否定した。スタルマン警察長官は、同月、婦警候補生に求められているのは、健康検査であり、処女検査ではないと述べている。)

 

指二本による侵襲的処女検査について、世界保健機関(WHO)は「非科学的」と断じているし、インドネシアの女性人権委員会は性的暴行の一形態であると糾弾しているが、インドネシアでは繰り返し起きている問題である。政府高官や国会議員は、特に女学生について、処女検査を課す考えを何度も漏らしている。

 

この2月にはジャワの東にあるジェンバー市の市議会議員が、卒業を迎える中学生には処女検査が課されるべきだと提案した。「処女でなければ、卒業させるべきではない」と彼は発言した。2013年末には、南スマトラ州プラブムリ市の教育長が処女検査を高校入学の必須条件にするべきだと提案した。どちらの提案も、世論の猛反対に遭って棚上げされた。

 

それにしても、一体何故、インドネシア人はこれほど処女に夢中になるのか?独裁主義者の「新体制」は終わったかもしれないが、女性を国家の道徳維持のシンボルとする考えは依然として残っていると語るのは、女性人権活動家であり医療人類学者でもあるライス・マルコスである。民主化改革の時代に宗教的保守主義が勃興し、道徳的価値が危機に瀕しているという意識から、この処女に対する考え方は一層強化された。ライスは言う。「処女性はいっそう神聖視されるようになった。軍隊のような国家の組織にとって、処女検査は、組織自身の腐敗を隠蔽するための道徳的シンボルになっている」

 

警察と軍における女性の割合は、それぞれ3%と2%であると推定されている。警察と軍の男性は女性を遙かに凌ぐ数だが、男性の道徳を測るためにどんなテストが必要かということに言及した高官は皆無である。

 

処女検査の実施は、いくつかの他国でも報告されている。アフガニスタンでは、(しばしば、家庭内暴力や強制的な結婚からの)脱走や婚外交渉の罪状で「道徳的犯罪」として告発された女性や少女は、しばしば処女検査の対象になる。法廷は実施を非難しているものの、エジプトの拘留施設では処女検査は依然として違法に行われている。インドは、国中のレイプ被害者に対する処女検査を禁止する新しい手続き実施を、まだ体系的に行っていない。

 

インドネシアの警察や軍でいつから処女検査が行われるようになったのかははっきりしないが、HRWがインタビューした女性の中には1960年代に検査を受けた人もいる。軍の女性採用候補者は普通全員で、軍病院において、大広間をカーテンで仕切った検査室で検査を受ける。「処女検査を擁護する人々は似非科学を信じている」とHRWのハルソノは言う。「(女性の処女膜が)11時と1時の方向の間で破れていれば、それは事故によるものだと彼らは信じています。もし、それが6時の方向で破れていれば、その女性が性行為を行ったことの証左だと彼らは信じているのです」


女性人権委員会の委員長を務める元警官のイラワティ・ハルソノは、30年前に警察に入ったときにこの検査を受けなければならなかった。「実際に検査を体験したものとして、この検査は非常に差別的で侮辱的だと感じました」と彼女は言う。「あれを忘れることができる人はいないでしょう。つまりトラウマになるような経験だということです」

 

ある退役した空軍高官は、検査の4年後、新婚の夫とハネムーンの間セックスをおこなうことができなかったと思い起こす。「体がこわばり、脚を開くことができませんでした」と、HRWの報告書で彼女は語っている。「それは、処女検査で受けたトラウマが原因です」

 

先週のHRWの報告を受けて、何人かの国会議員が、処女性と道徳性には何の関係もないとして、処女検査の廃絶を求めている。チャヒヨ・ クモロ内務大臣は、行政大学に入学する女性に対する処女検査を廃止すると、12月に約束している。

 

人権活動家はジョコ・ウィドド大統領に処女検査の廃絶を迫っているが、上流社会の保守層であるこのインドネシアのリーダーは、これまでのところ、この件に関して口をつぐんだままである。その姿勢や政策に大きな転換が生じるという期待は薄い。ライスは言う。「大衆が、国家の道徳は混乱していると考えれば考えるほど、純潔のシンボルを守るべきだという女性への抑圧も高まります。道徳が混乱しているかどうかは、男性上位主義者の男性が無意識下に有している最古の基準、処女性によって判断されることになるのです」

 

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唖然とする話です。


インドネシアは、世界最大のイスラム人口を抱えており、人口の約3/4がイスラム教徒です。この話の根底には、やはり、イスラム教の男性中心主義があると考えるべきでしょう。テロリズムISISの問題がある中で、こうした問題と宗教が結びつくと、イスラム教に対する反感がますます高まる可能性があります。それは、現状をさらに悪化させることになるでしょう。イスラム教社会自身の穏健派・良識派が、変えるべきことは変えるという姿勢をとって、自ら変化してもらいたいものですが、問題の根は深そうです。外圧でどれだけの影響を与えることができるのでしょうか。

 

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