ONEDOG:壁打翻訳手習帳

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Googleとイスラエル、月へ向かうか

非営利スタートアップ企業が、Google Lunar X Prize(GLXP)の最有力候補として名乗りをあげた

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NASAはアポロ時代の魔法を取り戻し、再び月面に宇宙船を送り込まないのかと、待ちくたびれた人も多いだろう。そんな人々に朗報である。Googleの助力も受け、イスラエルが月への関心を示そうとしている。

 

本日エルサレムでの午後12時45分、イスラエル大統領ルーベン・リブリンは、Googleおよびイスラエル非営利宇宙開発企業SpaveILの代表と記者会見をおこない、2017年末までに民間宇宙船を月面に送り込む計画を、SpaceILがGLXPの16参加者のなかで初めて正式決定したことを発表した。

2000万ドルの賞金を獲得する勝者となるためには、(出来るだけ無傷で)着地するばかりでなく、少なくとも月面で500メートル移動し、ビデオと高解像度の写真を地球に転送しなければならない。2着には500万ドルが与えられる。月面で一夜(地球での14日間に相当)を過ごした場合と、アポロの着地点訪問を果たした場合には、さらに総額500万ドルのボーナスが与えられる。

 

このコンテストの最終予選に残るためには、証明を受けた打ち上げ契約を2016年12月31日までに締結しなければならない。SpaceILは、米国の宇宙サービス会社、Spaceflight Industries社と契約することで、この条件をクリアした。Spaceflight Industries社は、スペースX社のファルコン9ロケットを最近購入しており、月面探査機を多数の積み荷の一つとして打ち上げる。

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今回の発表における声明で、SpaceILのエラン・プリブマンCEOは、こう述べている。「月面に探査機を軟着陸させることに成功した国は、米国、旧ソ連、中国の3ヶ国しかない。今、この限られたリストに、小国であるイスラエルが名を連ねる可能性がさらにいっそう高まったのである」

 

SpaceILの月面探査機は、およそ皿洗い機くらいの大きさをした三本足のマシンである。このマシンには車輪がないので、必須条件として課されている500メートルの移動は困難そうだが、Googleは宇宙船は走行しなければいけないとは定めていない。その代わりに、SpaceILは、降下用エンジンの燃料を充分残して、着地後に目的地まで飛んでいき、0.5キロメートルの移動距離を達成しようとしている。移動形式と宇宙船自体を両方シンプルにできることは、月に初めて挑むSpaceILにとっては大きな利点になるが、2000万ドルを手にするまでにはまだ長い道のりが待ち受けている。

 

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1960年代にアメリカが明らかにしたように、月への着陸は容易ではない。月面に到達した最初のアメリカの宇宙船は、1964年7月のレンジャー7号だったが、それはその前にレンジャー1,2,3,4,5,6号がすべて失敗した後のことだった。さらに、これらのレンジャー号は、高速カメラを炎上させながらの自殺的な飛び込みとなるハード・ランディングを試みていた。サーベイヤー1号が嵐の海に1966年に到着するまで、NASAは軟着陸を果たせなかった。(SpaceILにとってはいい話だが、サーベイヤー1号は着陸時に跳ねている。500メートルも跳ねたわけではないが)

 

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人類最初の月着陸点の近くにたどりつくことも簡単ではない。時間に迫られているなら、尚更だ。発射の延期、予定を上回るコスト超過、ハードウェアの故障、軌道に乗せることができなくなった加速エンジン。これらはすべて、この6月に国際宇宙ステーションに向かう無人輸送ロケットが離陸のたった2分半後に爆発したとき、SpaceIL自身が身をもって知ったことだ。

 

おそらく、SpaceILは資金的にはかなり余裕があるだろう。同社の筆頭出資者であり資金調達者となったのは、カーン財団とミリアム・アンド・シェルドン・G・アデルソン財団である。シェルドン・アデルソンはラスヴェガスのカジノの大立者だが、むしろ、共和党大統領候補達の資金貸し付け元として良く知られている。いまだ、宇宙に行くには、大統領選よりもさらに金がかかる。どんな資金源でもすぐに尽きてしまうだろう。

 

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さらに、SpaceILが最初にゲートをくぐったからといって、道が開けているわけではない。他の15の参加者も、打ち上げの切符を手にするまで1年以上の猶予がある。しかしながら、他の参加者が誰も打ち上げレースに加われなくなっても、SpaceILには別の競争が待ち受けている。

 

GoogleのXPrizeシニア・ディレクター、チャンダ・ゴンザレスはこう語る。「最悪のシナリオは、参加者が1つになってしまっても、レースが続く場合です。参加者は時間に追われながら開発を進めていますが、資金にも追われています」

 

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XPrizeプログラムにおいて、Googleは再考すべきだと言われている点として、6つのアポロ着陸点近くへの接近があげられるだろう。再考の時間は充分にある。この6つの着陸点を、米国国家歴史登録財として保護しようという動きや、UNESCO世界遺産に登録しようという動きもある。通常の国際的合意に到達することが難しくとも、別のやり方もあるはずだ。

 

NASAは、月を訪れるものに対して、これまですべての宇宙船到達点を中心とする半径0.5kmへの立ち入り、および有人と無人を問わず軟着陸がおこなわれた地点を中心とする半径2キロメートルへの立ち入りを控えることを求めており、Googleもこれを順守することを了承している。しかし、宇宙旅行は射撃ではないし、操縦をする宇宙飛行士にとっても、着陸地点は大まかなものにしかすぎない。SpaceILのような初心者が、ニール・アームストロングの立てた旗を着陸過程でへし折る失敗をおこすリスクなしにアポロ着陸点の半径500メートル以内に着陸できると考えているなら、それはあまりに傲慢というものだろう。そのような可能性は完全に排除して、この点に関する賞金は取り下げるというのが賢明だろう。

 

Googleがそうしても、このコンテストの価値は些かも失われるものではない。勝者への配当は減るだろうが、技術的にも想像への刺激という面でも良いことずくめである。もし、誰かが本当にやり遂げればの話ではあるが。

 

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 Googleの無邪気な大騒ぎが、したたかなイスラエルの国威発揚に利用されてしまうという構図でしょうか。それに比べると、戦略的な慈善活動に取り組むビル・ゲイツや、1ドルCEOの一方で慈善活動を表立ってすることは少なかったスティーブ・ジョブズは、見識のある姿勢と言えるのかもしれません。